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小児救急を学ぶ

あらためて、小児の救急を学んでいる。クリニックで心肺蘇生が必要な救急患者さんに会うことは、かなりまれなことだ。しかし、全くないとは言えない。喘息の大発作、アナフィラキシー、事故など。初期対応の遅れが生死を分けることもある。

学んでいるのは、AHA(アメリカ心臓協会)準拠の小児二次救命措置のプログラム。呼吸と循環の緊急事態への対応を実際の症例に即して学ぶ。6人1チームで人形を前にして、第一印象、バイタル、評価、判定、介入シミュレーションをする。頭で学ぶだけではなく、体でも学ぶのだ。



外の大雪も気になったが、中は熱く学んでいる。帰れなければ、会場にこもってプログラムをやってしまおうなどと話している。

幸い大雪の中を倍の時間をかけてホテルに帰り着いた。

ホテルから見る雪の夜景がきれいだった。

診断はなんのため

道南発達障がいを考える会に参加してきた。
今回のテーマは、「知能検査について」「WISC-Ⅲプロフィールによる事例研究」

療育センター

あたりまえのことだが、知能検査は、IQで発達が進んでいるか遅れているのを判断するだけではない、全検査IQに加えて、その下位尺度、例えば、言語理解(知識、類似、単語、理解)、知覚(絵画完成、絵画配列、積み木模様、組合せ)、注意記憶(算数、数唱)、処理速度(符号、記号さがし)の得点がどうかということをしっかり見ていくことが大切だ。今回あらためてそのことをしっかり学ぶことができた。

講師の廣瀬先生(五稜郭病院小児科)は、それぞれの下位尺度が弱い子の特徴、その子どもへの学習面への支援の仕方、行動面、社会性への支援の仕方を紹介してくれた。まさに、その子のプロフィールに応じた支援の大切さだと思う。

質疑の中で、「弱いところが見つかったらそれを訓練する手立てがあるのか?」と言う質問があった。これに対する、高橋先生(ゆうあい会石川診療所)の答えがとてもよかった。確かに弱いところを支援するというやり方もあるが、診断の目的は必ずしも訓練をするためじゃない。この子にはゆっくりなところがあるということを理解すること、その方面は伸びていきにくい、無理に伸ばそうと訓練しても伸びないのでかえって自信を失ってしまう、だからと言ってそのままでもいいということではない。でこぼこがあってもOK、診断によってその子の苦手に合わせた、まわりからの理解と支援が必要だということがわかる、訓練をするというのは普通に近づけるということ、そうではなく、その子のままで幸せになるための支援をするための診断なのだということを強調されていた。

まさにその通りだと思う。高橋先生の話をはいつ聞いても、とてもすっきりと筋道だっていて、かつ子どもたちに優しい。

いざという時のために

日本ACLS協会主催のBLSヘルスプロバイダー講習会に参加した。

BLS

内容は、AHA(アメリカ心臓協会)ガイドライン 2010にそったもので、 成人、乳児、小児の一次救命処置、気道異物の除去、AEDの使用を学ぶ。蘇生用の人形を使って、胸部圧迫と呼吸のサポート、AEDの使い方を実地に学ぶ。3人に一人のインストラクターがつくという実に中身の濃い講習会であった。

かねてから、あらためて救命救急の技術を学びなおしたいと思っていた。とくに医師一人でやっているクリニックには必須の知識と技術だ。また、医師、看護師だけではなく、事務、保育士にもぜひ身につけてもらいたい技術でもある。今年は、手始めに、自分も含め職員3人で参加した。最後に、実地と筆記の試験がある。まじめに取り組んだ甲斐あり、3人とも合格した。

私たちが研修医だったころは、経験主義的なやり方で、見よう見まねで教わってきた。胸骨圧迫の仕方も指導医によって、やり方が微妙に違っていたりした。今回、アメリカ心臓協会という権威ある組織のガイドラインにそった講習会で、文献的な根拠のあるやり方を系統的に教わり、あらためて救命措置の大切さを学んだ。

医療従事者だけではなく、一般市民がこの技術を衣につけることが、救急患者さんの救命率を高めるという。今後、うちのクリニックでも広める努力をしてきたいと思う。

院内感染対策

院内感染対策の学習会を行った。病児保育所はるっこを解説してから、院内感染には気を使っている。改めて、知識を整理し職員みんなで共通の認識を得るために、学習会を企画した。

感染学習会2

学習会のあとは手洗いの実習もした。特殊な液を手につけて、その後いつものように石鹸で洗い落とす。落ちなかったところが、ブラックライトで光るという仕掛け。

感染学習会1

結構荒い残しがあるものだということを再認識する。指先、親指の付け根、手首・・・意外だったのは指の背の反ったところ。これから、意識して手洗いをしようと思う。とても有意義な学習会であった。


インフルエンザ検査について考える

今年もインフルエンザが流行ってきた。学校から「インフルエンザ検査をするように」と言われたといって受診する人もいる。確かにこの流行下では、インフルエンザにかかっているのかどうかがとても気になることだろうと思う。しかし、そのたびに思う、検査はそんなに万能じゃないんですよと。あらためて、検査の限界についてちょっと書いてみる。

ワクチン


どんな検査でもそうだが、検査の結果だけで病気の有り無しが100%わかるわけではない。疾患を持つ人でも検査では陰性に出る場合があるし、疾患を持たないのに検査では陽性に出る人がいる。

感度・特異度表

感度 a/a+c x100
特異度 d/b+d x100
陽性的中率 a/a+b x100
陰性的中率 d/c+d x100

インフルエンザにかかっている人でも、検査では陽性に出たり、陰性に出たりする。インフルエンザにかかっている人の中で、陽性に出る人の割合を「感度」(上の表の a/a+c ×100)と言う。また、インフルエンザではない人の中で、陰性に出る人の割合を「特異度」(上の表のd/b+d ×100)という。

例えば、今うちのクリニックで使っている検査キットは、感度93.8%、特異度98.1%であることがわかっている。つまりインフルエンザになっている人1,000人を検査したら、938人は陽性になるが、62人は陰性に出てしまう。逆に、インフルエンザではない人1,000人を検査したら、981人は陰性だが、19人は陽性になってしまうということだ。

感度93.8%というのは、かなりいい方に見える。けれども、外来には、事前にインフルエンザかどうかがわかっていない人がくるので、ベイズの定理という確率の公式が適用される。以下に少し詳しく解説するが、外来でインフルエンザ検査陽性に出た人をインフルエンザと診断できる確率(これを陽性的中率という)は、地域の有病率に左右され、次の式であらわされる。陽性的中率=感度×有病率/{感度×有病率+(1-特異度)(1-有病率)}×100。(上の表でいえば、a/a+b ×100)

例えば、地域である程度インフルエンザが流行っているとする。わかりやすくするために地域の人の集団10,000人を考える(下の図)。地域の有病率を10%と見積もると、10,000人中1,000人がインフルエンザ(真陽性者)で、9,000人が非インフルエンザ(真陰性者)と考えられる。実際にインフルエンザである人1,000人中検査でインフルエンザ陽性になるのは、1,000×0.938=938人(真陽性検査A)。一方インフルエンザではない人9,000人中インフルエンザ陽性になるのが9,000×(1ー0.981)=171人(偽陽性検査B)。検査で陽性だった人が実際にインフルエンザである確率(陽性的中率)は、インフルエンザ検査で陽性になった人(真陽性検査+偽陽性検査)の中の真の陽性者(真陽性検査)の割合、A/(A+B)×100で計算できる。これは、938/(938+171)×100=84.5%、8割5分の確率にしかならないのだ。

陽性的中率

地域の有病率が上がれば、この数値は上がっていく。有病率が30%(流行のピーク)なら、陽性的中率は 95.4%。これならかなり信頼度は高い。一方有病率が下がれば、この数値はもっと下がって行く。有病率が0.1%(ほとんど流行していないとき)なら、陽性的中率は33.2%にしかならない。3人に1人しか的中しないのだ。

逆に、検査で陰性だった人を本当にインフルエンザでないと診断できるのはどれくらいの確率(陰性的中率)であろうか?これは、ベイズの定理によれば、陰性的中率=(1-感度)×有病率/{(1-感度)×有病率+特異度(1-有病率)}×100となる。(上の表でいえば、陰性的中率=d/c+d ×100)

これを計算すると、有病率0.1%の時、陰性的中率99.9%。有病率10%の時、陰性的中率99.3%。有病率30%の時、陰性的中率97.3%となる。流行っていないときは、検査通り否定してもいいが、流行のピーク時には、少し慎重になるべきだということだ。たとえば、家族やごく身近にインフルエンザの人がいて、2,3日おいて高熱が出ていれば検査で陰性が出ても、インフルエンザと診断する。なので、検査しないでも状況だけでインフルエンザと診断するのはごく普通にあることだ。

これだけでも、インフルエンザ検査が100%でないことがわかってもらえると思う。医者は、インフルエンザの検査結果だけでインフルエンザと診断しているわけではない。検査結果を参考にしながら、地域の流行状況、患者さんの年齢、症状(重症感、症状の変化)などを参考に全体的な状況からインフルエンザであるのかどうかを診断している。

だから、地域の方々(学校の先生、幼稚園・保育園の先生)にお願い。安易に「インフルエンザ検査をして来なさい」と言わないで欲しい(検査だけではわからないのだから)。せめて、「インフルエンザかどうか診察(診断)をしてもらうように」と言って欲しい~外来でいろいろ頭をめぐらせて考えつつ、奮闘している医師に敬意を表して。


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プロフィール

はる

Author:はる
北海道七飯町で小児科クリニックを経営。子どもたちのこころとからだの豊かな成長を願って、日々の診療、子育て相談、講演会活動を展開している。

名前:高柳滋治
仕事:はるこどもクリニック院長
   病児保育所はるっこ所長
趣味:アドラー心理学を学ぶこと
   草花の写真を撮ること
好きな言葉:
”今日は残りの人生の最初の日”

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