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違う世界の言葉

今月もまた請求事務が始まった。

専門家にレセプトを点検してもらったが、その時に気がついたことがある。レセプトの世界は、医師が住んでいる世界とは似ているけど、実は全く違う世界なのだということ。

医師は、毎日毎日患者さんを診察して、どんな病気なのかを判断し、病名をつけ、必要な薬を出し、時には必要な検査をする。しかし、その思考のプロセスとまったく違うところで、レセプトは動いている。考えてみれば当たりまえのことかもしれない。だけど、つい医師の世界の価値基準でものを考えてしまう。そうすると、「なんでそうなるの?」と疑問が浮かぶ。

たとえば、他院でインフルエンザと診断され薬をもらった。インフルエンザは治ったのだが、そのあとの咳が続くために、当院に受診した患者さんの場合。

医師は、これはインフルエンザ後の気管支炎だと診断して、その方向で薬を出す。だから、医師の書いたカルテには、「インフルエンザ」と「急性気管支炎」の診断名が書かれるであろう。しかし、インフルエンザにかかわる薬や検査がないので、この場合レセプトには、「インフルエンザ」の病名は不要ということになる。

あるいは、熱が出て12時間以内に来院された患者さんの場合。
医師は、検査しても陰性になるだろうと推測して、検査はしないが、まわりの状況と臨床症状から、インフルエンザと診断して、抗インフルエンザ薬を出す。その場合、カルテには「インフルエンザ」とだけ書かれるであろう。

しかし、抗インフルエンザ薬を出すと、インフルエンザにA型かB型かの別を記載するように勧められる。レセプト的には、AかBか大事だけど、医師にとっては、インフルエンザはインフルエンザだ。

ことほどさように、医師の思考過程と、レセプトの思考過程は異なる。ひょっとすると、ぜんぜん別の世界の言葉だって考えた方がいいのかもしれない。

”郷に入っては郷に従え”
医師の世界の考え方、感じ方をいったん脇において、この1週間は、レセプトの世界からものを見ることにしよう。
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Author:はる
北海道七飯町で小児科クリニックを経営。子どもたちのこころとからだの豊かな成長を願って、日々の診療、子育て相談、講演会活動を展開している。

名前:高柳滋治
仕事:はるこどもクリニック院長
   病児保育所はるっこ所長
趣味:アドラー心理学を学ぶこと
   草花の写真を撮ること
好きな言葉:
”今日は残りの人生の最初の日”

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