アドラー心理学基礎講座理論編その2


基礎講座理論編、2回目の二日間【5月15日16日】の感想。
ゆったりとすすむ優子先生のやさしい口調にうんうんとうなずき、良い頃合いではいるグループディスカッションやワークで参加者同士で盛り上がったりしているうちに、あっというまに4日間が終わっていました。
振り返ってみるととてもたくさんのことを学ばせていただいたと思います。「基本前提の歌」と、「ライフスタイルの歌、共同体感覚の歌(縮小版)」を、あらためて全文読む機会を与えていただきました。テキストを読み、優子先生の解説を聞いていくうちに、これまで野田先生に教えていただいたことが、この短いテキストにぎっしり詰まっているということがよく分かりました。4日間通しで聞くことによって、「理論としての基本前提、ライフスタイル論と、思想としての共同体感覚」の全体の見通しが良くなったと思います。これからも繰り返し、復習していきたいなと思いました。
先日自助グループの例会がありました。ある方の近況報告で、相手役さんの行動でカチンときたときに、「Aさん(自助グループのメンバー)ならどういう行動をとるかな、なんて言うかな」と考えて、その人になりきって、感情的になるのを抑えて冷静に対処することができたというお話をしてくれました。「自助グループは女優養成学校だね」と笑いあっていました。
今回の基礎講座で学んだことと併せて考えると、これって、まさに「仮想論」だなと思いました。普段私たちは、自分の持っているある価値で状況を判断して、これはいけないと考え、感情的になって行動を起こしてしまう。一方こんな風に自分の価値をいったん脇に置いて、違う行動を取ることができるのは、私たちのもっている価値感が、ある「仮想」にすぎず、その仮想を入れ替えさえすれば、これまでとは違った行動がとれるということだということなのですね。それが実感として分かりました。
あらためて、「仮想論」というのは、すごく強力な考え方だと思いました。「仮想論」単独で考えるのではなくて、他の基本前提の「個人の主体性」「目的論」「全体論」「社会統合論」や、思想の「共同体感覚」とあわせて考えて、初めて大きな作用効果を生み出すということもよくわかりました。
どうしたら、人は倫理的に、謙虚に、慎ましく生きていけるのか?争いなく、平和に、人を疎外することなく生きていけるのか?それは「仮想論」が決め手なのじゃないかと思います。私たちは無意識的にはずっと自己執着にとらわれている。自己執着衣とらわれたままではどうしても人とぶつかる。自己執着から共同体感覚に向かうには、自分の価値をいったん保留にする必要がある。そのために、「価値相対論」に立つ。自分のもっている価値にこだわるのではなく、どの価値もありえると考えられること。その背景に「仮想論」があるということだと思います。
実践的には、まず自分の価値がなんなのかを知ること。そして、他の人の持っている価値もありだなと思えるようになることが必要。その点で、「エピソード分析」はとても優れている方法だと思います。自助グループの中で、自分のエピソードを出してみんなで点検し、自分の価値観を知ること。そして人のエピソードを聞いて、人はそれぞれ大切にしている価値をもっているのだと気づくこと。どの価値もその人の歴史の中で作られた貴重な物だって感じられるようになっていくことが大切だと思います。そういう実践の積み重ねの中で、次第に自己執着から離れることができるようになっていくのではないかと思いました。
また、「対人関係論から社会統合論へ」「認知論から仮想論へ」「青写真としてのライフスタイルから運動の線としてのライフスタイルへ」など、古典的な理論の解釈から、新しい解釈へと広がってきているところを興味深く聞きました。
ライフスタイルは、固定された物ではなくて、私と相手の間でできている。人との関わりの中で維持されている。間違った信念というくくり方ではなく、コミュケーションの構造、形の問題なのだととらえる。そうすることで、相手を裁くのではなく横の関係で関わることができ、その関係の中で人は少しずつ変わっていけるのだというお話でした。まさに、「柔らかい決定論」だと思います。「いつでも人は変われるのだ」ということを理論的に裏打ちしてくれるこの考え方はとても貴重だと思いました。
アドラー心理学は、「理屈はシンプルだが、実践するのは困難」ということをあらためて認識しました。でも自分がやらなければ周りの人はやらない、自分がやると周りもそれに影響される。そして次の世代は、より明るい未来を作れるようになっていく。そんな風にお話していただいたことがとても印象に残っています。これからも、この七飯の地で、みんなと一緒に実践しながら学び合っていきたいと思っています。
未来への希望を感じられる講座でした。講師の優子先生、そして一緒に学んだ仲間達に感謝したいと思います。ありがとうございました。