今日は3月最後の日だった。3月に入ってから、道南地方ではインフルエンザが猛威をふるった。高熱が続いたり、状態が悪い子どもたちが、たくさんやってきて、毎日毎日とても忙しく働いた。時々からだが悲鳴をあげそうになったが、なぜか、朝になるとすっきり目覚めて、さあ今日も頑張ろうという気になる。50うん歳になったとはとても思えないと言われる。つくづく、今の仕事が自分にあっているのだと思う。
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昨日は、道南発達障害学習会があった。今回で3回目の集まり。話題は、今回の東北地方の大震災が、発達障害を持つ子どもたちや家族にどんな影響があったかと言う話。
その方面の人は知る人ぞ知る「おめめどう」というところが出しているメルマガをみんなでシェアした。地震後余震が頻発したり、停電があったり、家を離れて避難所での生活を余儀なくされたりする。私たちでさえ混乱するのに、発達障害を持つ子どもたちの混乱は想像に難くない。こんなときにどんな支援が必要なのかと言うことがわかり易く書かれている。
やはり大切なのは視覚支援。ただ筆談をするだけでも冷静になれる、音声言語のように流れて消えていかないので、しっかり伝わるし、何度でも確認出来る。一日の見通しを視覚化する、余震や停電の情報を視覚化する、活動の場所、やっていいことを視覚化するなどなど~様々な工夫を教えてもらった。
特に印象的だったのは、機能が高い子どもの場合、普段の生活ではほとんど視覚支援を必要としないが、いざというときに、今までできたことが出来なくなってしまう。非常時こそ視覚支援が必要となってくる。しかし、視覚支援も普段から使い慣れていないと、うまく使えなかったりするという話。
つい先日、連続講座で発達障害を持つ子どもへの支援について学んだばかりだったので、とても新鮮な気持ちで聞くことができた。少しずつ発達障害への認識が深まっていく。次回の学習会は5月20日。実は4月2日に、神戸で行われる外来小児科学会主催の発達障害のワークショップに参加してくる。次回の学習会にその参加報告をすると宣言してしまった。余計な仕事引き受けてしまったなと思ったりもするが、報告をすることにしておくと、身をいれて聞けるのではないかと思う。
何より「知は力」だ。
昨日の夜は、「発達障害の子どもを援助する連続講座」の第6回、テーマは「行動のマネージメントについて」、最終回だ。
このブログでは、1月14日の第4回「コミュニケーションについて」、2月10日の第5回「対人関係や社会性の支援について」の報告を書き漏らしていた。正直なところ、この2回は消化不良なところがあって、どうにも書きようがなかったのだ。この4回目と5回目の内容は、とても実践的な中身だった。一方、私は今、クリニックの外来で、また通園施設の嘱託医として、障害を持つ子どもたちと関わっているだけで、家庭や保育園や学校などのように、生活をともにしているわけではない。従って、「コミュニケーション」や「対人関係」に関わって、確かな手応えのようなものを感じることができず、これらの大変中身の濃い実践的な内容を受け止めることができなかった。どこかで、実践できる場面があればいいのにと願う。
そして迎えた最終回、「行動のマネージメント」。内容は、「行動分析」の手法を使って子どもたちを支援する。いわく「問題行動の原因を本人に求めるのではなく、個人と環境の相互作用の中に求める」・・・これは、大変親しみのある考え方だ。アドラー心理学の子育ては、その技法を行動理論の技法に負うところが大きい。背景としている理屈は異なってるが、目標を実現する手段として、まさにこれを使っている。だから今回のセッションは、すんなりと頭に入ってきた。
もっとも印象的だったのは、自閉症の子どもたちの特性をふまえると、事後の対処ではなく、事前の準備がないより大切だという部分。「腕の見せ所は、その場で指導して言うことを聞かせるのではなく、準備をして、本人が適切な行動をとれる指導をすること」という言葉は、とても響いた。これは自閉症の子どもたちへの対応だけではなくて、すべての子どもへの子育てにも言えるのではないだろうか。失敗から学ぶことも大事だが、成功を準備して、成功したことから学ぶほうが、痛みが少なく、また子どもたちも意欲的に学べるのだと思う。
今回が最終回であった。最後に企画した立場から挨拶した。始まりは、とにかく私が発達障害のことを知りたくて企画した。実際に企画してみて、やはり知は力になるということを実感した。外来でのお母さん方への相談にもしっかり使えている。参加した人も、自分の子どもや担当している子どもたちの対応にすぐに変化があったのではないか。こうやって知っている人が増えることが地域を変えることになる。せっかく集まったのでこの横のつながりを生かせる仕組み作りたい。また、知っている人がもっと増えるように、来年度も講座を開設したいという夢を語った。
この仕事は、これから私のする仕事の大きな柱の一つになるのだと思う。
今日は、第10回目ののびのび講座であった。
テーマは、「心豊かな育ちのために」。今年最後ののびのび講座なので、まとめの意味で、今の私に一関心のある「意欲を育てる」ことをテーマにお話しした。
心豊かな育ちを考えるなら、やっぱりアドラー心理学。人間は社会的生物であるというところからお話を始める。人間の社会は、「分かち合い」を特徴にする。分かち合いは、収穫物を分かち合うだけではなくて、仕事も分かち合う。私ができることを誰かのためにし、私のできないことを誰かに頼む。人間は一人では生きてこなかった。この厳しい大自然の中で、集団を作り、収穫物を分かち合い、仕事を分かち合い、協力共同して生きてきた。集団に所属するのは、人間の基本的な欲求になっている。
だから、人はどこかに所属できていると感じられると、とても元気になる。この場合の「所属」は、一つには「他者とつながっているという感覚」だし、もう一つには「誰かの役に立つことができているという感覚」だ。その両方があるときに前向きに生きていく力が出てくる。つまり人間の「意欲の源泉」は『所属』にあるといえる。
アドラー心理学の子育てでは、子どもが「他者とつながっているという感覚」と「誰かの役に立つことができているという感覚」をのばすことを目標にする。つまり所属できるように働きかけること、それが「勇気づけの子育て」だ。子どもを勇気づけた結果、自分の快不快ではなく、共同体に対して貢献する方向に行動するようになるというのが目標だ。
そのための工夫は、一言で言えば、「ともに遊ぶこと、ともに働くこと、ともに話し合うこと」であり、パセージに出てくるような様々な工夫をすることだ。
概略以上のような話をした。今回は宣伝が少なかったせいか、参加者はごく少なかった。そのおかげで、一通りお話した後、たっぷりと質疑応答というか、懇談というか、個別の相談というか、とても濃密な時間を過ごすことができたのではないだろうか。とてもお得な講座であったと思う。
何を隠そう、今日は私の5*回目の誕生日だ。それを知ってか知らずか、今日も外来は大混雑だった。もしかして、誕生日のご祝儀かというのは冗談だが、ここに来てインフルエンザがまた流行っていることと、連休明けだったことが重なって、たくさんの患者さんが来院された。ありがたくもあり、困ったことでもあり、複雑な心境だ。
インフルエンザの流行がなかなか止まらない。A型とB型の両方が混在して流行っている。つい東北の震災で避難されている方々のことを思う。今は、このインフルエンザが避難所に飛び火しなければいいのにと願うばかりだ。メーリングリストや医療関係のサイトで、医療従事者の支援が広まっていることが話題になっている。支援にはいった医師たちの生々しいレポートも投稿されている。被災者たちもがんばっているし、地元の医師たちもがんばっている、支援に入った医師たちもとてもいい動きをしているようだ。
つくづく日本はいい国だと思う。私たちには当たり前と思えるのだが、被災地で略奪や暴動がないということが海外のメディアで驚異をもって報道されているらしい。集団の和を大切に、いかに他者と協調するのかを大事にする国民性が、こんな時にとても有効に働く。たくさんの人が協力しあい、励まし合って、できることを誠実にやっている。
私も今目の前にある、私のできることを誠実にやることだなと思う。