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歸國(きこく)

七飯文化センターに倉本聡の演劇「帰国」を見に行った。8月15日終戦記念日の深夜、65年前に戦死し南の海で漂っている英霊たちが、東京駅に降り立つと言う設定で始まる。英霊たちの目から見た65年後の日本の姿を描き出す。確かに、日本は平和になり豊かになったが、日本人の魂は貧しくなったのではないか。部隊長が言う「『貧幸』と言う言葉を知っているか?貧しく困った状態は貧困だが、貧しくても幸せにいることができる、それが『貧幸』だ」

私たち戦後世代は戦争を知らない。戦争前後の貧しさも知らない。ただ、悲惨で苦しく惨めだったのではないかと想像している。貧しく、つらいこともあったのかもしれないが、そんなに不幸だったのだろうか?英霊たちのきびきびした行動には、なにかすがすがしささえ覚える。彼らには自分の命をかけてさえ守ろうと思ったものがあった。

彼ら英霊たちはいったいどんな時代を生きたのか?あの頃どんな思いを抱いていたのか?どんな思いで戦地に赴いたのか?どんな日本を夢見ていたのか?そんなことを考えさせる演劇だった。

私自身は、かつて、他者のために自分の命を犠牲にするという生き方をとても愚かなことだと否定していた。時代小説にはよくそういう場面が出てくる。大将を逃がして自分が矢面に立つとか。自分が死んでしまえばそれで終わりじゃないか、なんて無駄なことだろうと思っていた。

かの英霊たちは、そういう現代的なクールな考えと対極の生き方をしている。国の守りのために自ら戦地に赴く。今回の演劇を見ているときに、彼らの考え方が少しわかるような気がした。少し年をとったせいだろうか?自己執着がとれてきたのかもしれない。

あらためて、靖国神社に行ってみたいと思った。聞くところによると、靖国神社の「遊就館」と言うところに、英霊たちの遺書が展示されているらしい。そういうことを知っておく必要があると思えてきた。

自分の個人的な満足のためだけに生きる事を否定して、全体とともに生きる。他者を幸福にすることでしか自分を幸福にする道はない。演劇の中に、自分を育ててくれた母親を厄介者扱いするお偉いさんの話が出てくる。これに象徴されるように、現代は、個人の幸福追求が最優先されている時代かもしれない。

戦争は、悲惨だしとても愚かなことだ。とても肯定できるものではない。でも、あの頃、お国のためにと戦地に向かった青年たちの純粋な心を否定することはできない。戦争というのは、あまりに極限すぎる状況かもしれないが、全体とともに生きるというのはどういうことだろうということを考えるのに格好の材料ではないかと思った。
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Author:はる
北海道七飯町で小児科クリニックを経営。子どもたちのこころとからだの豊かな成長を願って、日々の診療、子育て相談、講演会活動を展開している。

名前:高柳滋治
仕事:はるこどもクリニック院長
   病児保育所はるっこ所長
趣味:アドラー心理学を学ぶこと
   草花の写真を撮ること
好きな言葉:
”今日は残りの人生の最初の日”

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